相続放棄に関連する用語集

相続放棄と関連があり、当ホームページで出てくる主な専門用語を解説しました。ご理解の一助にして戴ければ幸いです。

解説用語は「相続」「相続人と相続分」「相続放棄」「単純承認」「限定承認」「遺産分割」「債権者」「家庭裁判所」です。

 

用 語 解 説

 

 

 

相続

死亡した者が持っていた財産上の権利や義務を、他の者が包括して承継することを言います。 相続は、死亡によって開始します(民法882条)。この死亡には、失踪宣告と認定死亡が含まれます。 財産上の権利には、土地・建物の不動産、動産、預貯金、現金、賃借権、貸金請求権、慰謝料請求権等、一身専属しないありとあらゆるものが含まれます。義務には、借金、住宅ローン、損害賠償債務等が含まれます。

相続人

と相続分

法定相続人とは、法律(民法)により規定された被相続人(亡くなった人)の権利と義務を受け継ぐ人のことを言います。相続人の範囲や、その法定相続分は、民法で次の通り定められています。

まず、被相続人の死亡当時、被相続人に配偶者(婚姻届をすませた法律上の配偶者を意味し、事実上婚姻関係にある内縁配偶者を除きます)がいるときは、その配偶者は必ず相続人になります。そして、被相続人の子、直系尊属、兄弟姉妹が、次の順位で配偶者とともに相続人になります。

第1順位 被相続人の子供

第2順位 被相続人の直系尊属(父母、祖父母、曽祖父母 ・・・)

第3順位 被相続人の兄弟姉妹

被相続人に子供がいれば、配偶者と子供が相続人となりますから、次の順位である直系尊属は、相続人とはなりません。子供がいなければ、配偶者と直系尊属が相続人となり、子供も直系尊属もいなければ、配偶者と兄弟姉妹が相続人になります。配偶者がいない場合は、上記の順位によって、相続人が決まります。

次に法定相続分ですが、

- 配偶者と子供(第1順位)が相続人の場合は各2分の1

- 配偶者と直系尊属(第2順位)が相続人の場合は配偶者3分の2に対し、直系尊属3分の1

- 配偶者と兄弟姉妹(第3順位)が相続人の場合は配偶者4分の3に対し、兄弟姉妹4分の1

このように、法定相続分は、相続人の組み合わせによって決まります。

相続放棄                              

相続放棄とは、相続人の地位を放棄することを言います。

その結果、相続放棄が認められた人は、はじめから(生れた時から)相続人でなかったという扱いになります。

従って、相続放棄者は、当該被相続人(亡くなった人)の相続人ではありませんから、当然、被相続人の借金の返済義務を相続によって受け継ぐことはありません。

このように、相続放棄というのは、相続人が被相続人の遺してしまった借金の負担から解放させると言う非常に大きな力を持っていることがお分かりいただけると思います。

相続放棄をするためには、管轄の家庭裁判所に対して、相続放棄をしたい旨の申立をしなければなりません。

しかも、この申立は、法文上(民法第915条1項)、原則として、自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内にしなければならないとされています。

単純承認

単純承認とは、亡くなった方のプラスの財産だけでなく、マイナスの財産(負債)も含めて、すべてを受け継ぐことを意味します。すべてを承継しますので、プラスの財産がマイナスの財産よりも金額が大きければ、問題は生じませんが、プラスの財産よりもマイナスの財産(負債)のほうが大きい場合は、注意しなければなりません。

わずかに負債のほうが大きい程度であれば、それほど大きな影響はないかもしれませんが、亡くなった方が何千万円、何億円という負債を抱えたまま他界されたのならば、単純に相続人の地位を承継する「単純承認」を選択することは慎重にしなければなりません。

さらに注意を要するのは、自己のために相続が開始したことを知って3ヶ月以内に何らの手続きをしなかったならば、単純承認したとみなされてしまい、他の手続きである限定承認や相続放棄を選べなくなります。また、亡くなった方の預貯金の名義を自己名義に変更したり、解約して預貯金を消費したりすると、3ヶ月を経過していなくても、やはり単純承認したことになります。

限定承認

限定承認とは、単純承認の同様に、一応積極財産(プラスの財産)と消極財産(マイナスの財産)のすべてを承継するが、消極財産については、承継した積極財産の限度でしか、責任を負わないとする相続形態をいいます。

相続人にとっては、相続が開始してもプラスの財産と、マイナスの財産の金額が正確にわからず、単純に相続したらいいのか、相続放棄したらいいのかわからない場合があり得ます。負債の金額がわからないので、単純に承認するのは怖いし、放棄するにしても積極財産のほうが大きければ、放棄したことを後悔することもあります。このような場合に、限定承認は、被相続人には積極財産はある一方、他方では借金等の消極財産もあり、被相続人の遺した積極遺産の範囲内で負債(消極財産)を返済できるかどうか不明な場合によく採られる便利な方法です。

この限定承認手続をとると、被相続人の消極財産が積極財産の総額を超えている場合は、積極財産の範囲内で各債権者に配当弁済し、相続人はそれ以上の責任を負わなくてよく、相続人の固有の財産を守ることができます。一方、すべての消極財産を弁済しても、積極財産が残った場合は、相続人がこれを承継することができるのです。

法定単純承認

民法9211号は、「相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき」を法定単純承認の事由として挙げています。 

「処分」には、相続財産を売却するなどの法律上の処分のほか、相続財産を壊す場合なども含まれます。

ただし、ほんの軽微な処分までが全て法定単純承認事由に該当するかどうかについては、判例の考え方も分かれているようです。

なお、民法9211号がいう「処分」は、限定承認や相続放棄の前に行われる処分を指します。

限定承認や相続放棄の後に行われた処分については、民法9213号が規定しています。

民法921条3号は、次のような行為が法定単純承認事由に該当するとしています。

いずれも限定承認や相続放棄の後に行われることを前提としており、債権者を害する意思が必要であると言われています。

現実にどの程度の隠匿・消費などが法定単純承認に該当するかは微妙な判断が伴いますので、相続財産を取り扱う際には注意が必要です。

  • 相続財産を隠匿したこと
  • 相続財産を私(ひそか)に消費したこと
  • 相続財産を悪意で財産目録に記載しなかったこと

なお、ある相続人甲が相続放棄をしたことによって、新たに相続人となった者乙が相続の承認をした後は、相続人甲が上記のような行為を行ったとしても、法定単純承認として取り扱われることはありません(民法921条3号但書)。

遺産分割協議

相続人のうちの誰が、どの財産を取得するのかは、まず遺言書が優先します。ただし、この遺言には個々の遺産の帰属者が定まっており、遺産分割の協議をするまでもない場合です。遺言が作成されていなかったり、遺言が無効とされる場合は、民法の定める法定相続分で相続することになります。そして、遺言書はあるが具体的な分割方法が決まっていない場合や、法定相続分は決まっているが、個々の遺産の帰属権利者が定まっていない場合は、当該遺言書や法定相続分に基づいて、誰がどの財産を取得するかを相続人全員で話し合うことになります。これが、遺産分割協議です。

遺産分割前の相続財産は、共同相続人の共同所有(共有)となりますが、そのままでは各相続人単独の所有財産とはなりません。遺産が、預貯金、他人に対する債権等の可分なものであれば、分割協議を経ることなく、法律上当然に各相続人の相続分に応じて取得分が決まります。

しかし、遺産は、通常可分なものばかりではありません。殆どの場合、遺産は土地や建物、自動車、宝石といった不可分なものが含まれています。この不可分な遺産をいつまでも相続人らの共有状態にしておくことは、財産の管理・利用・処分の上で、支障が生じます。

そこで、この共有状態を解消して、各相続財産ごとにその取得者を決めるのが、遺産分割なのです。

債権者

債権とは特定人が他の特定人に対して一定の財貨または役務を給付することを要求する権利と定義されます。そしてこの債権を持っている人を債権者と呼びます。例えば、AさんがBさんに100万円を貸し付けたとしますと、AさんはBさんに100万円を返して下さいという要求する権利(貸金返還請求権)を持っているのです。

家庭裁判所

家庭に関する事件の審判(家事審判)及び調停(家事調停)、少年の保護事件の審判(少年審判)などの権限を有する裁判所といいます。相続放棄の申立は、被相続人(死者)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。